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はんだ付けを学ぼう

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第2話「熱量は水のように」の巻

登場人物

  • ヒカル君
  • 田中さん

わかりやすいように、はんだこての種類を「温度飽和型(おんどほうわがた)」「温度制御型(おんどせいぎょがた)」の2種類に分けるとしよう。

なんだか話が難しくなってきましたね。で、どう違うんですか?

まずは温度飽和型。このはんだこては常に目いっぱいの電流が流れているんだ。つまり常に「ON」の状態だ。

えー!それじゃあ、どこまでも温度が上がっていってしまうじゃないですか?そんな危ないはんだこてはいりませんよ。

はっはっはっ(笑)。じゃあ、このグラフを見てごらん。

温度飽和型のはんだこてに通電すると、ある温度までは上がるんだけど、そのうち温度が上がらなくなるんだ。この温度を飽和温度といって、はんだこての使用温度の目安になっているんだよ。

どこまでも温度が上がるわけじゃないんだ。なぜそんなことになるんですか?

この図を見てくれるかな。

この水槽に一定の割合で水を入れて、ためていくんだけど、実はこの水槽には穴があいていて、おまけにこの穴は水位が上がるにつれてどんどん大きくなっていくという厄介な代物なんだ。はじめのうちは穴が小さいから水位は順調に上がっていくんだけど、水位が上がるにつれて穴が大きくなり出ていく水の量が増えて、水位があまり上がらなくなってくる。するとどうなると思う?

うーん。出ていく水が増えると・・・そうだ!入ってくる水の量と、出ていく水の量が同じになって水位は上がらなくなるんじゃないですか?

その通り!温度飽和型のはんだこても同じ理屈なんだ。水槽はこて先、貯まっていく水がこて先に蓄積される熱(蓄熱量[ちくねつりょう])、入ってくる水がヒーターからこて先に供給される熱、穴から出ていく水はこて先から逃げていく熱になるんだよ。外気とこて先の温度差が大きいほど、逃げていく熱は大きくなるから、それがつりあったところで温度が一定になる。こういう状態を熱的平衡状態[ねつてきへいこうじょうたい]って言うんだ。

なるほど、だんだん分ってきましたよ。

次に温度制御型だけど、これは飽和温度になる前に強制的に温度が上がらないようにしたはんだこてなんだ。

さっきと同じ水槽で説明すると、蛇口を全開(ON)にして、水位が上がってくるところまでは同じなんだけど、さっきと違うのは水位が希望水位になったとたん蛇口を閉じてしまう(OFF)ところなんだ。そして水位が下がると再び蛇口を全開(ON)にし、また希望水位になると蛇口を閉じる(OFF)。わかるかな?

わかりました。その希望水位がはんだこてに表示されてる温度なんですね!

その通り。その他にも温度を調節するための制御部を別にもうけた「ステーションタイプ」と呼ばれるはんだこてがあるんだけど基本的には同じだね。ただこて先の温度を好きな温度に設定できるので、熱量がたくさん必要なものから、あまり熱量を与えすぎてはいけないものまで、幅広いはんだ付けに対応できるんだ。

うーん、つまり同じ320℃のはんだこてでも、温度飽和型は目いっぱいがんばってやっと320℃。温度制御型は、まだまだ温度が上がるんだけど、余力を残した320℃ってことですね。

よく分ったね。そのとおりだよ。温度制御型のいいところは正確な温度管理ができること。それに、ヒーターのW数を大きくできるから、こて先が設定された温度になるまでの時間や、はんだ付けしたあと、下の温度に戻るまでの時間が短くなるんだ。だから、連続作業には便利。でも、正確に温度管理する必要がなくて、連続作業もしないんなら温度飽和型のはんだこてで十分だよ。

僕の場合、どんなはんだこてがいいんですか?

配線のはんだ付けだから、20~40Wの「RED」でいいんじゃないかな。ただ、この先ICなどの精密電子部品のはんだ付けにも使うんだったら、15Wの「DASH」あたりがいいかもね。

うーん、そうですねー。じゃ、「DASH」にします。そのほうがいろんなものに使えそうだから…。ほかに買ったほうがいいものってあります?

そうだねー、熱くなったはんだこてを、そのまま置くのはとっても危険だからこて台は必要だよ。これなんかクリーニングスポンジ付きのこて台だから、こて先の余分なはんだを拭き取るのに便利だよ。あと、はんだ付けをミスしたときのためにはんだ吸い取り線もあったほうがいいんじゃないかな。これを使ってはんだを吸い取るんだよ。

はんだはどれを買えばいいです?

この「HEXSOL(へクスゾール)」というはんだでいいと思うよ。太さは電子工作なら直径0.6~1.0mm、金属加工なんかには直径1.2~2.0mmだから、ヒカル君の場合、直径0.8mmか直径1.0mmでいいんじゃないかな。

じゃあ、この1.0mmを買ってと。ところで先輩、これから時間あります?

まさか、一緒に来いって言うんじゃ・・・

わかりました?(笑)

というわけで、ヒカル君宅へ向かう二人であった。