製品情報トップ > はんだ付けを学ぼう > ヒカル君のはんだ付け奮闘記 > 第6話 「先輩はいい人だ」の巻
なんだか、はんだ付けが楽しくなってきましたよ。
それは良かった。なんと言っても、はんだ付けが上達するコツは楽しんですることだからね。
先輩、他に何か作る物ないですか?
そうだねー。せっかく来たんだから、もう1つぐらい作って行く?
できれば、よっちゃんが喜びそうな物がいいんですけど・・・
うーん、何がいいかなー?これなんかどうかな?
なんですか、これ?
ボイスチェンジャー。
これなら、よっちゃんも遊んでくれそうですね。さー作るぞ!
あれ?先輩、これケースに穴があいてませんよ。
本当?じゃあ穴は僕があけておくから、ヒカル君ははんだ付けしちゃってよ。
わかりました。いやー田中先輩っていい人ですね。 さ、作るぞ。あれ?先輩。
何?
これ、部品が1つ既にはんだ付けされてますよ。
あっ、本当だね。こういうのを「表面実装」(写真1)っていうんだよ。
写真1
なんだか、はんだ付けする数が少なくなって、損した気分ですよ。
でも、こういうリードとリードの間隔が狭い部品ははんだごてではんだ付けするのはかなり難しいよ。隣のリードとブリッジしちゃうんだ。まあ、まだヒカル君には無理だね。
ふーん、そうなんですか・・・
まずは背の低い部品から、曲げて差し込んで曲げてと。それからこて先を当ててはんだを送る。はんだを離して、こてを離す。うーん、なかなかいいできじゃないですか?
ヒカル君、いい調子だね。リズムがいいよ。はんだ付けってリズムも大事だよ。それはそうと、ヒカル君、その持ち方ではんだ付けしにくくないかい?
え?どうしてですか?
いや、使いにくくなければいいんだ。僕は鉛筆を持つようにはんだごてを持つし (写真2) 、グリップ全体を握る人もいるよ (写真3)。子供や力の無い人にはその方が使いやすいみたいだね。ヒカル君は僕のをみて、同じようにしてるみたいだから、ちょっと気になってね。
写真2
写真3
僕もこの方が使いやすいですね。それはそうと先輩、この黒くて足が3本出ている部品は何なんですか?
それは”トランジスタ”(写真4)っていうんだ。電流や電圧を増幅したり、スイッチの役目をしたりするんだよ。
写真4
へー、なんだか難しそうな部品ですね。
昔のトランジスタは熱に弱くってネ、トランジスタの中が80度以上になると壊れてしまったりしたんだよ。
えっ?!じゃあ、はんだ付けなんてできないじゃないですか?
できないことはないけど、大変だったよ。トランジスタの足にヒートシンク(写真5)っていってはんだごてからの熱をトランジスタの中に伝えないように放熱する物を取り付けてはんだ付けしたんだ。ヒートシンクが無い時はピンセットではさんだりとかね。
今のトランジスタは性能が良くなって150℃ぐらいまでは大丈夫になったから、ヒートシンクを使うこともあまりなくなったけどね。
写真5
大変だったんですね。
心配だったら、ヒートシンク使う?
使わないですよ!でも見るだけ見せてください。
ほら、これがヒートシンク。でも心配だったら使った方がいいかもよ。
そ、そうですね・・・
ヒカル君できた?
もう少しです。このリードをニッパで切ってと・・・できました。でも先輩、スピーカーがありません。
仕方ないな、これを使ってよ。
ありがとうございます。こことここをはんだ付けしてでき上がり。先輩、はんだ付けのチェックしてください。
どれどれ、ヒカル君、上達が早いね。かなり上手になったよ。ちょっとまだはんだの量にばらつきがあるけどね。 あれ?ヒカル君この電解コンデンサ、極性逆じゃないか?(写真6)ちょっと待てよ、このR2とR3、それからR6とR7が取り付ける場所が反対だ。
写真6
えー、本当ですか?!
何でもそうだけど、慣れてきた頃が一番ミスしやすいんだよね。
こんな場合はどうやって直すんですか?それとも、もう・・・
大丈夫、はんだ吸取り線ではんだを吸取って、一つ一つ部品をはずして付け直せばいいんだから。
先輩、はんだ吸取り線ってなんではんだを吸うんですか?
はんだ吸取り線は、銅線を編んでフラックスを染込ませてあるんだ(写真7)。はんだ吸取り線を、はんだの上で温めてやると、はんだが溶けてはんだ吸取り線にぬれる。あとは毛細管現象ではんだが吸い込まれていくんだ。毛細管現象というのは、狭いすき間に液体が浸透していく現象で、タオルが水を吸い込むのと同じだね。
写真7
なるほど。じゃあ、とにかくはんだを吸取ってみます。
・・・これでいいかな。う~ん、この位置だとちょっと取りにくいですね。ん・ん・ん。
無理に引っぱったりねじったりすると、パターンがはがれてしまうよ!一見はんだがなくなったように見えてもまだくっついていたりするんだ。もう一度はんだ吸取り線をあててもいいけど、はんだが少なくなってスルーホールの奥に入っているとなかなかとりにくいから、一度はんだ付けしてからもう一度吸取ってみるといいよ。
あ、うまくいきましたよ。でも今度は隣のはんだまで吸取ってしまいました。
結構大変そうだね。はんだ付けよりもはんだ付けの修正のほうが難しいからね。ちょっと待って、いいものがある。
なんですかそれ?
SPPON(スッポン)。
HAKKO SPPON
すっぽん?それで何をしろと。
これではんだを吸取るんだよ。この中にはピストンが入っていて、筒がシリンダーになっているんだよ。このシャフトをカチッと音がするまで押し込んで、ボタンを押すと、シュッポン!ばねの力でピストンが押し戻され、空気を吸い込むんだ。
そんなので本当にはんだが吸い込めるんですか?
一回やってみるから見ててよ。シャフトを押し込んで、修正したい部分のはんだを溶かす。溶けたところで、吸い込み口を当ててボタンを押す。シュッポン!ほらね、はんだが吸取れたでしょ。
すっげー!ちょっとやらしてください。えーっと、シャフトを押し込んではんだを溶かしてボタンを押す。スッポーン あれ?うまく取れないぞ。
はんだごてを離すのが早いから、はんだが固まっちゃうのと、基板と吸い込み口との間に隙間が無いから空気が流れないんだ。スッポンを少し寝かせるか、吸い込み口を浮かすかして隙間を作る(写真8)。それからはんだごてはボタンを押すのと同時に離すか、吸取り終わるまで離さない。
写真8
そうか。よしもう一度、シャフトを押し込んで、はんだを溶かしてボタンを押してシュッポン!あ、うまくいった。次!次!
これ結構面白いですね。シュッポン!シュッポン!シュッポン!シュッポン!
あ!そこは吸取らなくても大丈夫なのに!
あー!調子に乗って大丈夫なところまで吸取ってしまった!
はぁ~
えーっと、はずした部品を正しく付け直してはんだ付けしてと・・・リード線が短いから難しいですね。
よし、できたぞ!
はんだを吸取った後は、他のはんだ付け部分が取れてないか、はんだくずでリード線がショートしていないか、確認したほうがいいよ。
そうですね。えーっと・・・大丈夫です。じゃ、動かしてみますね。電池を入れて、スイッチON。
あー、あー先輩ちゃんと動きましたよ!
完成!(スピーカーはキットには付属していません。)
それは、良かった。じゃあ片付けようか。
そうですね。いやー先輩って本当にいい人ですね。
そんなことないよ。
先輩、今日は本当にありがとうございました。僕、ますますはんだ付けに興味が湧いてきましたよ。
それは良かった。
それじゃ、先輩、また。
おいおい、ちょっと待ってよ。
え?何ですか?
スピーカーと授業料はサービスとして…。サイコロキットとボイスチェンジャーのお代は頂きま~す(笑)
えー、ただじゃないんですか?!
だから、スピーカーと授業料はただ。
とほほ・・・