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はんだ付けを学ぼう

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第8話「鈴木さんとの再会」の巻

登場人物

  • ヒカル君
  • 鈴木さん

ヒカル君は、某メーカーに就職しました。
今日は新入社員研修の初日です。

今日から社会人、緊張するなぁ~。
新入社員は僕だけ・・・同期の女の子と合コンってのは僕にはないのか・・・

おはようございます。おっ、君はいつぞやの。

あ!あなたは鈴木さんじゃないですか?!

君はうちの新入社員だったのか。そうか、そうか。ありがちな話じゃのう。ま、よろしくな。
お、そうじゃ、そうじゃ。まだ君の名前を聞いとらんかった。おい、自己紹介せい。

城ヒカル、22歳。趣味は音楽鑑賞です。あと電子工作に興味があります!よろしくお願いします。

電子工作か。わしと話があいそうじゃのう。ふぉふぉふぉ。
わしは製造課の鈴木じゃ。
ところでヒカル君や、この間はどんな話をしたかのう?最近物忘れがひどくていかんわい。

はんだ付けの歴史についてです。はんだ付けという技術が今もほとんど変わらずに使われているのはなぜかというところで、話がおしまいになったんですよ。

そうじゃった、そうじゃった。よく覚えとるのうヒロシ君。

あのー、ヒカルなんですが・・・

おうおう、すまんのう。最近、人の名前を覚えるのが苦手でのう。
はんだ付け技術という観点から見れば技術は日進月歩しておるよ。こては炭火で温めるものから、電気加熱になり、こて先の温度を正確に保つために温度制御されとるものもある。はんだ付け方法にしても、こてではんだ付けする数は今では大分少なくなっておる。後で話をするが、リフローやフローはんだ付けといった方法から、超音波、レーザーはんだ付けまでさまざまじゃ。つまり、道具やはんだ付けの方法は昔から考えると想像がつかないぐらい発展しておる。ほとんど変わっていないのは材料のほうじゃな。

そうですね。

答えは簡単じゃよ。スズ-鉛系のはんだに変わるものがなかったんじゃよ。そもそも変える必要もなかったんじゃな。溶ける温度は比較的低く、コストも安い。狭い隙間にもきっちり流れ込むし、よく拡がり、よくヌレる。強度的にも申し分ない。今では環境的な観点から鉛を含まない鉛フリーはんだというものが使われ始めておるが、これとてスズ-鉛はんだの利便性にはかなわない。

スズ-鉛はんだってすごいんですね。

そのとおりじゃ、ワタル君。

いや、だからヒカルですって・・・

すまん、すまん。年はとりたくないもんじゃのう。とにかく、今現在もスズ-鉛はんだは一般的に用いられておるし、中でもスズ63%鉛37%を合金にした共晶はんだは、183℃という比較的低い温度で瞬時に溶け、固まるときも瞬時に固まるので好んで用いられておる。

なぜ瞬時に固まるといいんですか?

なんじゃ質問の多いやつじゃのう。ちっとは自分で勉強せい!
まあ、今日は研修期間中じゃから、仕方ない教えてやろう。

あ、ありがとうございます。

純物質、つまり何も混ざっていない物質は固体、液体、気体の3つの状態を持っておる。ところがじゃ、2つ以上の物質が混ざった場合、溶け始める温度と、完全に溶ける温度が違うために固体と液体が混ざった状態が存在するようになる。
はんだ付けとはくっつけたい金属の隙間にはんだが流れ込まなきゃならんのじゃが、溶け始める温度と完全に溶ける温度に差があると、一見溶けているようでも実は溶けていないという状態が存在する場合がある。半溶融状態じゃな。ここまではわかるかな?

はい、何とか大丈夫です。

するとじゃ、溶けて液体になった部分は隙間の奥に流れ込むが、溶け残った部分は取り残されてしまうんじゃよ。これを溶け分かれというんじゃが、これが起こると接合部分の強度や耐腐食性が悪くなってしまうんじゃ。

なるほど。イメージつかめてきましたよ。

液体から固まるときも同じじゃ。一見固まったと思っても実はまだ固まっていなかったりするんじゃ。そのときに動かしてしまうとはんだ付け不良になってしまうんじゃよ。共晶というのはそもそも融点が一番低くて溶ける温度と固まる温度の差がない組成のことをいうんじゃ。だから、純物質と同じで、一定温度で瞬時に溶けるし瞬時に固まるんじゃ。これでわかったかな?

よく、分かりました。

よしよし、なかなか飲み込みのいい奴じゃな。話のついでに鉛フリーはんだについてちょっと説明しておくかのう。
おい、ヒサシ君。

ヒカルです。

なんじゃ、いちいち細かい事を言うな。君はなぜ鉛フリーはんだが必要かわかるかな?

それは、鉛が体に悪いからじゃないですか?

そうじゃ、鉛は人間の中枢神経を侵す毒性を持っておるんじゃ。でもな、昔はおしろいや顔料として鉛が使われておったんじゃよ。まあ今ではその毒性が確認されて使われなくなったがね。当時は歌舞伎役者さんにとっては職業病みたいなもんだったんじゃな。
ところで、昔は水道管にも鉛が使われてたんじゃが、知っとるかね。

えー!?それって、ものすごく危険な事なんじゃないですか?

ところがそうでもないんじゃな、これが。水の中に溶けている炭酸や酸素と鉛が結びついて、2PbCO3・Pb(OH)2という鉛化合物の皮膜が、鉛管の内側に形成されるんじゃ。この化合物は水に溶けない性質をもっておってのう。この皮膜が、鉛が水に溶け出すのを防いでおるんじゃよ。昔は水道水もきれいじゃったからのう。

今でも、水道管に鉛って使われているんですか?

今では使われておらん。水質が悪くなったからのう。殺菌剤が多量に使われるようになって、鉛管の内面に皮膜が形成されにくくなってしまったんじゃよ。

そうだったんですか・・・

でじゃ、鉛フリーはんだはなぜ必要なんじゃ?

うーん、環境問題に関係ありそうですね。それに、はんだを直接口にすることはまずなさそうですから・・・やっぱり水、飲料水に関係ありそうですね。

君はなかなかいいところをつくな。そうじゃ、この場合問題になるのは酸性雨じゃ。

酸性雨?

壊れて使い物にならなくなった電化製品は、当たり前のように捨てられ埋め立てられる。これが酸性雨にさらされると、はんだの中の鉛が溶け出し地下水に混ざってしまうんじゃよ。

地下水は、やがて飲み水になり体の中に取り込まれてしまうんですね。

そのとおりじゃ。現在、色々な鉛フリーはんだが使われておるが、それぞれ一長一短があってのう。
スズ-鉛はんだのようにはいかんようじゃ。一部実用化されてはおるが、全体的に普及するにはまだまだ問題が多いのう。

そうなんですか・・・しかし、人間の体に関係あることですし、何とかしないとダメですよね。
でも、鉛ばかりが悪者にされていますが、問題は酸性雨であったり、基板の廃棄方法にもあるように思うんですが。

そうじゃな、現在、家電リサイクル法など、国による取り組みがなされておるし、メーカーでも廃基板の処理方法について研究がされてはおるがのう。

個人個人がもっと環境について真剣に考えていかなければなりませんね。

そうじゃよ、そういうことなんじゃよ、タケル君!

ワザと間違えてませんか?

ふぉっふぉっふぉっふぉっ(笑)