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はんだ付けを学ぼう

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第7話「昔の人ってすごい!」の巻

登場人物

  • ヒカル君
  • 田中さん
  • 鈴木さん

先輩、はんだ付けって、昔からあるもんなんですか?

何、突然?(笑)。かなり昔からあるとは思うけど、僕も「はんだ付けの歴史」については、あんまり良く知らないなあ。いい機会だから、図書館でも行って調べてみたら?

そうですね。そうしてみます。

今度はヒカル君が、先生になって僕に教えてよ!

まかせといてください。(笑)

図書館へ

えーと…。とりあえず「はんだ」と「エレクトロニクス」で検索かけてみようかな。 おーあったあった!なになに・…ええええ!!

こらこら、君!図書館内では、もう少し静かにしなさい。

あ、すいません。

何をそんなに驚いているんだね。

はんだ付けの歴史は、紀元前3500年頃って・・・

おお!何だ、君は「はんだ付け」に興味があるのかね!そうかそうか。それなら今から私の家に来なさい。図書館では、あんまりおしゃべりできんからな。

は、はあ?あの失礼ですけど、あなたは・・・?

わしか?わしは鈴木といってな、ちょっと人よりはんだ付けが好きなおやじじゃよ。

鈴木氏宅にて

まま、そこへおかけなさい。あーこれこれ、床の本は踏んじゃいかんよ。

す、すいません。

さて、君は、はんだ付けの何を調べに図書館に行ってたのかね?

いや、あのー、はんだ付けっていつ頃から使われているのかなって。

はんだ付けの歴史というわけじゃな。はんだ付けの歴史はさっき君が驚いていたように、紀元前約3500年前といわれておる。実際にはんだ付けされたものは紀元前300年頃のローマ遺跡から発見されておる。

そんな昔から使われてるんですね。でも、電気も無い時代に、何をはんだ付けしてたんですか?

おいおい、君は根本的に間違っておる。はんだ付けは、なにも電子部品を基板につけたり、配線する時だけに使うもんじゃないぞ。ブリキやトタン板などをくっつけるのにも使われておる。ちなみに、ローマ遺跡のはんだ付けは、水道管の継ぎ手に使われておるんじゃ。

えー?はんだ付けでそんなものまでくっつくんですか?!

もちろんじゃ。まぁ、確かに、「はんだ付け」と言えば、「エレクトロニクス」というイメージがあるからのう。じゃが、ローマ遺跡のはんだ付けは、エレクトロニクスの分野にも通ずるものがあるんじゃよ。

いったいどういうことですか?

驚くこと無かれ!なんと、ローマ遺跡に使われておったはんだの成分は、スズ62%鉛38%なんじゃ!これは、現在エレクトロニクスの分野で広く使用されている「共晶はんだ」とほぼ同じなんじゃよ。

えー本当ですか?!・・・ところで「共晶はんだ」って何ですか?

はんだというのは、そもそもスズと鉛でできておる。それは知ってるかね?

あ、はい。

スズも鉛も簡単に手に入る金属で、おまけに安い。金属同士を混ぜ合わせると、混ぜる量の割合で特性が変わるんじゃが、スズ62%、鉛38%の割合で混ぜたものを共晶はんだといってのう。溶ける温度が一番低くて、固まるまでの時間も一番短いんじゃよ。

溶ける温度が低い…それってなんかいいことがあるんですか?

これこれ、考えてみい。「低い温度で溶ける」ということは、それだけ作業しやすいということじゃよ。はんだ付けするためには、はんだはもちろんじゃが、くっつけたい金属をはんだが溶ける温度以上に温めてやらなきゃいかん。そのためには、はんだ付けするための道具はもっと温めてやらなきゃいかんじゃろ。はんだの溶ける温度が高いと、くっつける金属を温めるのも、道具を温めるのも大変なんじゃよ。おまけにあまり温めすぎるとくっつけたい金属が傷んでしまうこともあるしのう。

なるほど、ところで電気のない時代のひとって、どんなはんだごてを使ってたんですか?

金属製のこてを炭などの火で温めて使っておったんじゃ。

へー、そうなんですか。昔の人ってすごいんですね。ところで日本ではいつ頃からはんだ付けが使われ始めたんですか?

うむ。実は正確なことはわかっておらんのだが、まぁ少なくとも8世紀頃までには使われていたと言われておる。正倉院や奈良の大仏にも使われておったそうだからのう。当時は仏像の建立やそれにまつわる様々な工芸品が盛んに作られておって、そこにはんだ付けがつかわれていたんじゃ。さらにじゃ、江戸時代の文献にもはんだ付けの記述がみられるぞ。「和漢三才図絵(わかんさんさいずえ)」という書物を知っておるか?

なんですか?それ。子供の絵本かなんかですか?

ばかもーん!この「和漢三才図絵」という書物は、江戸時代の百科事典じゃ。大阪の医師であった、寺島良安(てらしま りょうあん)という人が、なんと30年以上もかかって編さんしたというすごいものじゃ。全て漢文で書かれておるが、挿絵も豊富に入っているので、見てるだけで結構たのしいぞ。ほれ、これなんか。ふぉふぉふぉ。

……。

でじゃ、この書物には「鉛一斤、唐錫十両を練りあわせ、これを用いて…」とある。一斤が約600gで十両は約375gじゃから、鉛6:スズ4の材料を使ったはんだ付けの記述ということがわかるぞ。

あのー、なんでこんな昔からの技術が、ほとんど変わらずに使われているんですか?ほかの技術ってどんどん違う形に変化してるじゃないですか。

それは…おっいかん。もうこんな時間じゃないか!ちょっとわしはこれから出かけなきゃならん用事があっての。すまんがまた今度ということで・・・帰ってくれ。

えー?!